11月1日付で私の係に人事異動がありました。
私の係に来て1年7カ月のFさんが総務課に異動し、新しく区役所からMさんが来ることになりました。そこでMさんには、本庁舎で仕事をするにあたっての心構え等を説き、Fさんにはこの一年有半の思い出を含めて今の私のモロモロの思いをお伝えしたいと思います。
健康福祉局医療福祉課後期高齢者医療係の職員としての心構え~Mさんへ
Mさん、突然の人事異動に大きな戸惑いと不安と、少しの期待を含めていろいろな思いが入り混じっていて、心の中はまさにパニック、何をどうすればいいんだろう、という気持ちでいっぱいだと思います。区役所では今回の人事異動について、「本庁に異動か、大変だけど頑張ってな。」とか、「メンタルにならないように気をつけてや。」とかいった、様々な激励や不安の声があったと思います。今はどんな気持ちですか。不安と期待と、「どうしよう、何をどうすればいいんだろう」、「どんなことがあっても、なんとかやっていこう!」、「でも、実際にどんな事をするんだろう」、「区役所では、市民の方の相談や受付とかをやっていたけど、本庁ではどんな仕事をするんだろう」といった思いや感情でいっぱいのことと思います。
区役所保険年金課の仕事はモロモロの事柄がありますが、一言でいえば、「市民のための仕事」を自分の実力なりにこなしていくとこだったと思います。市民のそれぞれの思いを知り、自分の獲得してきた知識や経験でもってその思いにこたえることが重要だったと思います。加えて、自分の仕事を含めて事務の構造を把握し、どうすればもっと効率的に、もっと市民の立場での仕事ができるか、日々仕事を振り返り、反省し、明日からへの改善につなげていったことと思います。人の心を知り、制度の中身を知り、事務の構造を知る、これが区役所での仕事の本質だと思います。
医療福祉課後期高齢者医療係の仕事についても、当然、今まで区役所で経験してこられたこれらの本質的な事柄はとても重要です。この点では、今までの仕事の延長線上のことであって、特に心配することはないと思います。
しかし、私たちの係では、区役所での仕事と大きく異なる点があることも事実です。それは一体何か。3つあります。
1つは、人の心を把握する、その対象の問題です。区役所では基本的に市民の方の気持ちを理解しそれに対応すればよかったのですが、これからの仕事ではそれに加えて区役所の職員の気持ちをも理解しなければなりません。時に本庁と区役所の思いが違ってくることもあります。特に新しい事務をするときや制度が変わった時などは、本庁として区役所にやってほしいと思うことの全部が、なかなかうまく各区役所全体には伝わらないこともあります。区役所で働く職員の気持ち一般を理解し、個々の職員の気持ちを理解し、その気持ちを踏まえて仕事をしていくとこが重要です。「本庁は指導し、区役所は指導される」という側面は確かにありますが、一緒に事務を行っていくうえでの単なる役割分担であることも事実です。逆に「本庁は区役所での仕事の下支えをするんだ」という気持ちが大事になってきます。これは区役所経験をしてきたMさんならよくわかることと思います。また、保険年金課や介護保険課、広域連合といった関係部署の職員や、様々な業者の人間とも密接に関係してきます。こうした人々を含めての「人の心」を理解し、把握し、対応していくことが求められます。
2つ目は、制度の中身を知ることにかかわることです。区役所では、せいぜいのところ、「制度的にこういうふうになっています。」とか「法令上、こうしてもらわないといけないんです」とかいった表面的な・現象的な説明ができるレベルでの制度理解だったことと思います。しかし、本庁の仕事は条例等をつくることも含めて、法令等の理解、具体的には「これこれのことは何法の何条にこういう規定があるからこうなります」とか、「条例何条のこれこれという規定は、こういう意味で定められているのです」といった構造的な制度・法令の理解が必要になってきます。なぜなら、市民の方が直接問い合わせることもありますし、区役所に問い合わせがあって、忙しくあわただしい現場ではゆっくりと時間をとって調べつくせないような事柄の照会が間接的にあることもあります。私たちの係では、そうした細かい中身についても即座にこたえられる、少なくとも調べれば5分ほどで回答を得られる、こうしたレベルでの制度理解が求めれらます。
3つ目は、事務の構造を理解する中身の問題についてです。区役所での事務といえば、申請書の受付や証・勧奨状の発送等の対市民向けの仕事と、入力事務やリスト等のチェック事務等が中心だったと思います。システム関係の証の打ち出しや入力事務等については、なかなか区役所ではその構造をいじることはできませんし、区配されるリストの中身もシステムですのでそれを変えることは区役所ではできません。できることといえば、勧奨状の様式を工夫するとか、チェック体制を強化するとか、あとは申請書等の様式を取り出しやすいように配置するとか、事務分担の区切り方を変更してより実務に即した分担にするとか言ったことかと思います。一方で後期高齢者医療係の事務の構造といえば、何といってもシステム、電算の仕組みがある意味で中心になってきます。区役所では扱えないこの分野の構造を理解し、新たに構築し、改善していくことこそ新たに求められる事務の構造の中身になります。
以上の3つに加えるに、予算決算を含めた議会対応があります。議会対応は基本的に企画係が行いますが、その対応についての基礎資料は、うちの係でしか作成できないものもあります。また、議会で説明できないような事務や運用はあり得ない!、議会や市民が納得できるような事務を構築していく必要がある、ということにもなります。
以上、後期高齢者医療係での事務の特殊性や心構えを区役所での事務と比較する形で説いてきました。この特殊性さえ理解し、心の準備も含めて実際に学んでいってもらえれば何も心配することはないです。区役所で経験してきたこと・その実力を大きく展開し、さらに発展させる良い機会に恵まれたんだ!、との常に前進あるのみ!、の心構えで毎日を成長していただければと思っています。過去に何をしてきたかの積み重ねが今の自分をつくっています。未来の成長した自分は、今から何をしていくかにかかっています。まずは先輩のことなど考えずに質問しまくってください。先輩の仕事の邪魔をしようがなにしようが、分からないことは全部聞いて、確認して、そして一つずつ理解していってください。次には先輩と一緒に進んでいってください。最後に後輩を含めて名古屋市を引っ張っていってください。高い理想を持ちながら、悩み、苦しみ、そうして成長することが、今後の自分の方向性を決定づけます。
後期高齢者医療係への異動は、"change of the place, change of the brain."であることを願って筆を擱きます。